Chie Nishimura
野菜中心の食生活は 自分のため?地球のため?

最近、私の周りでは「お肉を減らしてゆるベジタリアンはじめてみた」という声をちらほら耳にします。
ベジミートのハンバーガーやヴィーガンアイスクリームなどの商品も目にするようになり、今でこそベジタリアン、ヴィーガンという言葉が日本でも市民権を得てきたような実感を持っています。
私が子どもの頃は、菜食主義という言葉はお坊さんや健康志向の人の特別なもののようなイメージでした。というか、子どもの頃は周囲にそのような食生活をしている知人はいなかった気がします。

そんな私にとって初めて出会った身近なベジタリアンが、毎度おなじみの留学エピソードに出てくるホストマザーでした。
ドイツの片田舎に留学をした私が1年間ホームステイをした時のホストマザーとホストブラザーはベジタリアンで、基本的に肉は食べず、魚もごくたまに。卵、乳製品は食べていました。
高校2年生で初めてベジタリアンと一緒に暮らすことになった私は、どうして彼らが肉を食べないのかさっぱり理解できません。
それでも彼らと暮らすうちに、卵には平飼いとそうでないものがあるとか、乳牛がどんな環境下で管理されているかなどを知るようになり、少しずつ彼らが食の安全や倫理的問題について信念を持っていることだけは理解するようになりました。

3年前にデンマークでコミュニティガーデンを手伝った際のランチのまかないは、ベジタリアンのラザニア、お肉入りのラザニアの両方が当たり前に用意されていた
留学中はドイツにいながら、家族の一員として、肉を使わない豆腐ソーセージを食べたり、牛乳ではなく豆乳を飲んだり、ミートソースにはひき肉の代わりに大豆ミートを使ったり、そんなJAPANESEな食生活を送っていました。
ベジタリアンという生き方は一つの在り方として受け入れてはいましたが、留学生活を終えて日本に戻ってきてからは焼肉や唐揚げを喜んで食べ、自分がベジタリアンになるという選択肢はありませんでした。
それから数年経ち、思いがけずオーガニックカフェの運営に携わることで、再度私は食に向き合うことになりました。
その中で、児童労働や不当労働の上に成り立つコーヒーやカカオがあるということ、農薬がもたらす土壌や水質の汚染は深刻であることなどを知ることになります。
さらには女性の健康についても仕事で関わることがあり、日本人女性にとって心と体のバランスをとるための健康な食についても学びました。
実際に私は学生時代に冷え性で生理痛がひどかったのですが、食生活を変えることであっという間にそれらの不調がなくなったのです。
それまで「おいしい」から選んでいたものが必ずしも体にとって良いものではなかったり、誰かの犠牲の上に成り立っていたと気づいた時に、自分が口にするものは本当に自分の体を作り、未来を作っていくのだと腹落ちしました。
そうした学びや実体験を経て、改めてホストマザーがベジタリアンになった気持ちが少しわかったような気がしたのでした。

私は今もお肉も魚介も卵もいただきます。
けれど、野菜をたっぷり、植物性のものを中心が心地よいなと思うようになっています。
その気持ちに最近拍車がかかったのが、地球温暖化と肉食の関係を知るようになったことも大きなきっかけでした。
地球温暖化と聞くと、化石燃料エネルギーをイメージしやすいかと思います。
事実、石油や石炭などの化石燃料を燃やす際に発生する二酸化炭素が温室効果ガスの総排出量の65%を占めるとされています。
しかし今さらに注目されているのが化石燃料に次いで温室効果ガスの排出量が多いのメタンガス。
なんとその温室効果は二酸化炭素の20倍以上と言われています。
そしてそのメタンガスの主な出どころがなんと「家畜動物」なのです!
家畜が排出する温室効果ガスの総量は、”全ての乗り物から排出される温室効果ガスに匹敵する”と言われているほどなのです。
また畜産業の中でも牛肉や牛乳などの生産においての排出量が多いとされています。
ご存知の通り、牛は食べたものを反芻しながらゲップをしたり、オナラをすることでメタンガスを出します。
そもそも地球上には15億頭の牛がいて、そのうち達が排出する温室効果ガスの他、飼育するために森林が伐採されていたり、牧草に使われる農薬や、牛に投与される大量の抗生物質やホルモン剤が水質汚染を引き起こしていることも問題とされています。

地球温暖化を緩和するためにできることが書かれているおすすめの本。食のカテゴリーが面白い
ここで私が言いたいのは、牛を家畜として飼育することが悪いのではなく、安価で大量生産するために工業化してまで「食べ物」を生産することへの疑問です。
もちろん安価に大量生産することで、多くの人が食べられるものの選択肢が増えたかもしれません。
しかしそれによって引き起こされている弊害があまりに大きすぎると思うのです。
かたや、フードロスとして捨てられる食べ物もたくさんあります。
犠牲を払い続けながら、命をモノのように扱割れていることがただただ悲しいのです。
さて、そんなことをぐるぐる考えているうちに、ファームキャニングのオンラインサロンでは #週一ベジタリアン をみんなでやってみませんか?という投げかけをしてみました。
卵、魚OK、ゆるっと月曜だけベジにしてみる。
これまでの食生活から一気にお肉をなくすというのは現実的ではないかもしれません。
けれど週1度なら、とてもチャレンジしやすいのです!

ミートフリーマンデーという言葉を聞いたことがありますか? 毎週月曜日に動物性の食材ではなく野菜中心の食事をとることで、地球温暖化の緩和に貢献しようという運動です。元ビートルズのポールマッカートニーが2009年からミートフリーマンデーを提唱し始めました。
まさにそれをやってみようという試みです。
農林水産省によると2018年度の国内での肉の年間消費量は1人あたり豚肉が約12キロ、牛肉が約6キロ、鶏肉が約13キロ。
もし週に1度だけ肉を取らない食事を1年間続けると車で700km移動する分の温室効果ガスが削減されるとも言われています。

そして、1人でやるよりも、友達や仲間と一緒にチャレンジする方が圧倒的に取り入れやすく、楽しい!
そんな訳で、ゆる〜く初めてみたファームキャニングのオンラインサロンの #週一ベジタリアン 。 蓋を開けてみると、やってみたかったという声がちらほら。
毎週月曜になると、「お豆でこんなものを作ってみました」「大豆ミートで美味しい食べ方教えてください」などのコメントが写真と共に盛り上がります。
人の食卓を覗くのって、とっても楽しい!
自分の料理だとワンパターンになりがちですが、他の人の料理にはたくさんヒントが隠れています。

また、2月の Ring the Bell HAYAMAのライブゲストとしてご登場いただいた発酵ベジ料理教室主宰の和田和歌子さんは「植物性だけの料理には発酵食品を使うとコクや旨味が出るので肉がなくてもお美味しくできます!」と提案されています。
塩麹や醤油麹などを使うことで、塩味だけでなく、旨味がプラスされる。
これは男性が欲するガツンとした旨味を作る上でもとても役立ちます。
植物性の食事に変える場合、動物性タンパク質の代わりに何を食べればいいのだろう?という疑問にぶつかると思います。
もちろん植物性タンパク質=豆なので、豆を取り入れることはおすすめです。
けれど日本には大豆の加工文化があり、美味しい大豆のタンパク源がたくさんあるではないですか!
豆腐、油揚げ、厚揚げ、がんも、高野豆腐、納豆などなど。。。
もちろん大豆ミートやテンペなどもありますね。
また、お麩も精進料理の食材としても使われている通り、植物性のタンパク源です。
車麩の唐揚げや甘辛煮などは我が家でも人気なメニューです。
もともと日本は昔からお肉をそんなにたくさん食べていない食文化です。
どちらかといえば、穀物、野菜が中心でした。

私の好きな本に土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」があります。
ケの日、ハレの日という概念が日本の文化にはあり、ハレの日の食事は、神様に捧げるものだから時間をかけて、手間をかけて、とびきり上等な食材で料理をする。
けれど、日々のケの日の食事はたっぷりの野菜を入れた味噌汁と、ご飯、それにお漬物でよし、という考え方です。
ちなみに余談ですが、江戸時代の飛脚の食事はどんなものだったかご存じですか?
長距離を走るときは1日2回、玄米と漬物だけ食べ、普段の食事も麦入り玄米ご飯、漬物、味噌汁、魚の塩焼き程度だったそうです。
西洋の医師が肉を食べさせた方がスタミナが出るのでは、と実験をしたところ、肉を食べた飛脚はスタミナが切れてしまうということがわかり、驚いたというのです。
つまり、飽食と言われる現代ですが、食べたい欲のままに食べていると自分の体への負担も大きくなってしまうのです。
皮肉にも、地球環境の問題という側面から植物性中心の食生活の見直しを世界的にされはじめているわけですが、
質素な食事が健康面にもよく、昔ながらの伝統食には理由があったというわけです。
春の苦味のある野菜は冬に体に溜まった毒素を出してくれるといい、
夏野菜は体を冷やす作用があるというのは聞いたことがあるかもしれません。
そのくらい、人の体というのも自然の摂理に沿って働いているもので、その時節の食材を旬としていただくことが、自然の循環の上でも、人の健康面でも無理のないことなのだとつくづく教えられます。

決して肉食を否定したいのではなく、より意識的に食べるということを選択してみてはどうかという提案です。
自分が普段何気なく食べているものを見直してみると、見えていなかった多くのことに気づくことになるかもしれません。
ファームキャニングのスタッフの中では、日中はランチなどでお肉を完全に摂らないというのは難しそうだからということで、平日夜はベジタリアン、という人もいます。
そんな風に、自分のライフスタイルにあった取り入れ方をしてみてはいかがでしょうか。
おいしく、楽しく、が続けるコツ。
今後も自分にとっても、地球にとっても優しい選択をウキウキワクワクしながら選んでいきたいなと思います。