• Chie Nishimura

受け継ぐ文化を一皿に。



地元の人たちに愛されるお店というのは、あちらこちらで良い噂を耳にするものです。


今回ご紹介する葉山町の下山口に佇む隠れ家フレンチ「アンクルート葉山」も、そんなお店の一つです。


最寄りのバス停からも徒歩20分という、お世辞にも行きやすいとは言えない立地にありながら、

2017年にオープンして以来「あのお店は美味しい!」「特別な日に行きたい!」と口コミで広がり、地元での人気も確固たるものに。


先月Ring the Bell HAYAMA のライブではパテ アンクルート(パテのパイ包み)を教えていただきましたが、

もう参加したメンバーもオーブンから漂う香ばしい香りだけでノックダウン。

美しい手捌きにもうっとりです。





とろけるほど美味しい一皿を作り出す背景には、シェフの謙虚で真っ直ぐな情熱がありました。


お店のシェフは元パン職人の大町正行さん、通称マサさんです。


フランスのパンを極めていくうちに、「パンは食事があってこそのパンなのだ、パンをさらに理解するために料理を学ぼう」と、フランスに渡り料理の道へ。


そうしてパン職人に戻ることなく、帰国後は「ひらまつ」、「メゾン・ポールボキューズ」部門シェフ、横浜「モーションブルーヨコハマ」料理長、鎌倉「古我邸」料理長を経てご自身のお店を開店されたのでした。



さて、そんなマサさんとの出会いですが、実はファームキャニングのスクールがきっかけでした。

葉山町と横須賀市にまたがる湘南国際村にあった農園で、ファームキャニングは農園主とともに畑仕事とびん詰めの1年間のスクールを開催していました。


その2期生として、マサさんの奥様のよしこさんが来てくださっていたのです。

時々ご家族でも参加してくださっていたのですが、その頃ちょうど葉山に引っ越してきてお店を開くというタイミングだったのをよく覚えています。



その頃から、「畑のとれたての野菜がいちばんですねぇ」とお話しされていたのですが

マサさんのお店では、地元の農家さんの野菜など、地域の食や自然の循環を大切にしたものを選ばれています。


今ではスローフード三浦半島のメンバーとしてもご一緒させていただいているのですが、せっかくの機会ですので、改めてマサさんにお話を伺いました。


ここからは対談形式で書かせていただきたいと思います。

西村:食の世界の始まりはパン職人からですよね。大学に通われていたと思いますがそこからパン職人を目指したきっかけは何でしたか?



マサさん:大学時代は経済学部だったのですがもともとそれほど興味のある分野でなく、実際講義をうけるとやはり先生には失礼ですが私にはあまりあってないなぁと思い、転部も試みましたが、失敗し、やむなく在席しておりました。


ですので興味のある食べ歩きやお酒や映画などに時間を費やしておりました。

もちろんその財源は飲食店でのアルバイトでした。


私の父親も建築系ですが、自営業でしたのでかはわかりませんが幼い頃から職人には憧れがありました。とくに連れて行ってもらっていたお寿司屋さんなどすごいなぁとおもっておりました。


芦屋出身の友人がおり、変な関西弁を話すフランス人のパン屋さんがいることはきいており興味がありました。

銀座店にアルバイトの面接を受けたら採用され、川崎の店舗で働くこととなり、大学卒業後もそのまま社員となってしまい、パン職人となりました。




西村:そうだったのですか!ご縁ですね。

働かれていたお店が「ビゴの店」とありますがにて改めてビゴの店のHPを見てみると


「パンに対して決して妥協を許さず、添加物は一切使わない。パンは命の糧だから」


というビゴ氏の言葉があります。

今のスローフード的な考えに共感されるようになったのは、このお店からでしたか?


マサさん:そうですね、僕がパン職人だった頃、私達にとってパンはまだ嗜好品な感じでした。

いまではフランスのそれとは違うかもしれませんがだいぶ食生活のなかにとけこんでいると思います。


ビゴさんはフランス人なのでパンは日本人にとってのお米もしくはそれ以上のものだっとのだろうと思います。


なのでパン作りの優先順位は人間でなくパンでしたので、少量のイースト菌や自家製酵母で時間をかけて作っておりました。


当時、何も知らずにこれがパン作りなんだ思ってつくってましたのであまり意識していませんでしたが、当たり前ではないんだと、後に分かりました。

素晴らしいパンの師のもとで働くことが出来、有り難く思います。




西村:パンは命の糧だから、という姿勢、素晴らしくて震えます。


マサさん:あとフランスでの修行時代、食材を仕入れるとき地元のマルシェで買うのですかが顔見知りの作り手さんから信頼のあるものを頂いてました。


日本にいたときはなかった経験で、とても新鮮で気持ちのいい感じがしました。



西村:ファーマーズマーケットがあるとやはり生産者とのつながりを感じざるを得ないですよね。


フランスに単身渡って、日本の働き方と違うとこの前お話しされていましたが、特にフランス人の働き方、または食に対する考え方などで影響を受けたことは何ですか?



マサさん:その時は妻良子も一緒にフランスに来ていました。


まずランチ営業終わったら急いで片付けすぐお店から退出し、ディナーは日本と違い遅いのでだいたい8時頃がピークなのでおのおのお昼休憩が長いためお家に帰り夜に備えてお昼寝などできました。


レストラン営業時間は日本ほど長くないですが短時間集中型ですので営業中の密度は濃いのでなかなか大変ですが、時間は短かかったですね。


就労時間を効率よくという考え方は当時ヨーロッパでは普通だったのかなと思いました。



西村:ライブでも伺いましたが、フランス語の勉強も一からしながら、現地のお店で働くなんて、本当にすごい!でも、個人の暮らしを大切にするのもフランス人らしいですね。


ご自身のお店を始められて4年、始めた頃と今とで心境の変化はありますか?



マサさん:そうですね、もう?4年ですね!

葉山でお店をはじめてから千恵さんはじめ、たくさんのいい刺激をいただける方たちから学ばせていただき有り難く感じでおります!

微力ではありますが愛情を持って食材に向き合い調理するという気持ちは年々強くなっていると思います。

それが料理の美味しさに繋がれはなお良いのですが。



西村:マサさんのお料理をいただくと、それがとても伝わってきます。言葉でたくさん伝えなくても、食べた人に何かしらの想いが伝わる。それって究極だなと思います。


最後に、マサさんにとっての"サステナブル"ってどんなことか教えてください。



マサさん:おじいちゃんやおばあちゃんたちから教わったこと、私の場合は料理を通して先人たちから継承されてきたことを、伝えていくということですね。

例えば今回ライブで作ったバテアンクルートなんかも、創作料理ではなくてレシピが受け継がれてきている、完成された料理なんですね。

カツ丼や寿司や蕎麦などに似ていて、文化的な側面を持っています。

それを、良い形で伝えていけたらなと思うのです。


西村:なるほど...!文化を料理に乗せて継承するということですね!

なんて素晴らしいお仕事なのでしょう。


マサさん:あとは個人的には心と体のメンテナンスをしていくということも大切だなと最近は特に思いますね。


西村:自分自身が健康的でなければ、何事も続けることができないですからね。大切だとわかっているけど私もなかなかケアしきれていません(笑)。


マサさん:私もこれからやろうと思っている段階なのですけれども(笑)。そういうことに気を遣う年齢にもなってきたので、やっていかないとなと考えています。


西村:心と身体のバランスをとりながら、文化の継承を「美味しい」というアウトプットに変えて届けていくマサさん、これからさらなるご活躍をさらに楽しみにしています!

本日はありがとうございました!


2017年の開店時に伺った時の写真。奥様のよしこさん、マサさんと。

お話を伺い、改めてマサさんのお人柄があってこそのお料理なのだなあと、しみじみ感じました。

とっても丁寧で、美しく奥深いお料理なのにカッコつけていない、むしろ家庭的でホッとするような優しさが伝わってくるのです。


ぜひアンクルート葉山のお店で、それを実感してくださいね。


普通では見ることのできないマサさんのお料理ライブはアーカイブからご覧ください!

Ring the Bell HAYAMA LIVE: アンクルート葉山のパテアンクルートと石の暮らしスレート


アンクルート葉山

https://encroute-hayama.com