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  • 執筆者の写真Chie Nishimura

一期一会の畑のカレーペーストを作る「ホッチポッチャーズ」(文:西村 千恵)



鎌倉極楽寺にてスパイス商を営むアナン株式会社のバラッツ氏と、ファームキャニング がタッグを組んだユニット ”ホッチポッチャーズ”。

ホッチポッチャーズは、地元の農家さんの規格外野菜や旬で沢山採れ過ぎてしまう野菜をレスキューして、その野菜にあったスパイスを調合して作るカレーペーストを作るために結成されました。


今回のコラムでは、このホッチポッチャーズの"畑のカレーペースト"に込める想いをお届けしたいと思います。


今から2年前の2020年、逗子の浜を歩きながら私はバラッツ氏と電話をしていました。

その時私はびん詰めに関するちょっとした相談事をしたくて連絡を取ったのですが、その電話を機にまさかカレーのびん詰めを作ることになるとは全く想像だにしていませんでした。

そもそもバラッツ氏とは以前友人を介して知り合ったのですが、特に遊ぶわけでもなく仕事をしていたわけでもなく、本当に「知り合い」という程度のつながりでした。

そんな私たちが久しぶりの電話で意気投合してしまったのは、地元の「もったいない野菜」を地元で解決していきたいよねという思いがあったから。

バラッツ氏は、季節によって異なる規格外野菜や旬でたくさん取れすぎる野菜をカレーペーストのびん詰めにしたいと常々考えていたことを教えてくれました。

もともと形や色が不揃いな規格外野菜を生産者さんから買い取り、加工してびん詰めにしていたファームキャニング。バラッツ氏と一緒に取り組むことで、もっと農家さんのこと、野菜のこと、規格外のことを広めることができると嬉しくなり一緒に作ろう!とお互いすぐ決断したのでした。


まず初めに野菜をいただくことにしたのは神奈川県藤沢市で在来種・固定種を中心に無農薬での野菜作りをする柿右衛門農園。

相談してみると夏野菜がたくさんできる頃が良さそうとのことで、その時期に合わせて第一弾を企画しました。

実際に柿右衛門農園へバラッツ氏とファームキャニングのメンバーで伺い畑を回ります。

お野菜の生育状況や栽培方法について教えていただきました。

傷がついてしまっているトマト、小さすぎるナスや玉ねぎ、割れてしまった人参やニンニク。たくさんのお野菜をカレーペーストに使えることに。

そしてこの季節ならではのハーブたちも一緒に煮込もう!ということで、使用する野菜が集まりました。



柿右衛門農園は個人向けの宅配も多くされているので、厳守しなくてはならない企画があるわけではありませんが、それでも出荷しにくいなと思うお野菜はある程度出てしまうとのこと。

家族経営をされている柿右衛門農園は、栽培を祥誉さんが担当し、出荷や営業は奥さまの悦子さんが担っています。小学生のお嬢さんと3人家族、明るくてファンも多い農家さんです。

祥誉さんと悦子さんお二人は4年前に仕事をやめて専業農家になることを決められ、藤沢市で新規就農。

無農薬、無化学肥料でできるだけ自然のリズムに合った栽培を心がけ、その上在来種や固定種にこだわった野菜作りを続けられています。





ボランティアスタッフに時に助けてもらいながらと言いつつも、数カ所に渡る畑の栽培、管理を祥誉さんが一人で行うため、その仕事量を捌く動きは忍者さながらの早さ!

けれど爽やかな笑顔で、農業は面白いんだよなあとお話しする姿に脱帽です。

そうした生産者さんだからこそ、食卓にその思いを届けるお手伝いをしたいと思うのです。

私たちが日々食べている野菜はこんな方が作ってくださったんだなあ、と知ることができたら一段と感謝と美味しさが湧き上がってくるのではないでしょうか。



さて、この柿右衛門農園で集められたお野菜たち。

これをファームキャニングのキッチンに持ち帰り、洗って刻み、じっくり炒め、バラッツ氏がこの野菜たちのために調合したスパイスを合わせてペーストにしていきます。

カレーのスパイスと一言で言っても、野菜の特徴に合わせて爽やかさを出してみようとか、パンチを効かせてみようとか、香りや風味が全く異なってくるのです。

それをバラッツ氏は毎回特徴的ながらも美味しいバランスを作り上げるのですから、本当にスパイスの魔術師!

業務用の大鍋で、じっくり野菜を炒め水分を飛ばし、そこにスパイスを大量に入れて練るように炒め続ける作業は、かなりの重労働。

ここはバラッツ氏に甘えて、汗をかいてもらいました笑。



その後はファームキャニングの腕の見せ所!

瓶にペーストを充填、加熱しながら脱気処理をして商品として販売できるように仕上げていきます。

こうして、和気藹々と楽しみながらできた唯一無二のカレーペーストは牛脂などの動物性の食材も一歳入らず、100%植物なのにコクがある美味しいものとなりました。

食べる時はココナツミルクで割るだけ。

お好みの具材を入れてどのようにでもアレンジができる便利なびん詰めが完成です。



それから2年かけて、カレーのペーストは人気商品として販売するたびに完売となり、ぜひオリジナル商品を作って欲しいという依頼が来るまでになりました。

一度に作れる量に限りがあるので毎回限定数での製造になりますが、その時々で変わる畑の野菜が主役。この時期にはこの野菜とスパイスが絶妙だったよね〜 と、まるでワインのヴィンテージのように、一期一会のカレーペーストを楽しんでもらえたら嬉しいです。


最後にユニット名の由来をお話ししましょう。

どんな名前にしようかと考えあぐねていたところ、「英語で野菜やお肉などなんでも入れて作るごった煮のことを"HOTCHPOTCH(ホッチポッチ)" というらしい。畑の恵とスパイスをごちゃごちゃとびんに詰め込んでいくイメージ、とっても合ってない!?」と盛り上がり、それを作る人ということで、”HOTCHPOTCHERS"となったのでした。

これからも色々な畑の野菜とストーリーをホッチポッチしていこうと思います。そしてもしどこかでびん詰めを見つけたら、今回のお話を思い出してもらえたら嬉しいです。


*畑のカレーペーストは不定期にアナン株式会社のオンラインショップ インターネット オブ スパイス、ファームキャニングのオンラインショップ、DEAN&DELUCA(期間限定)などでお買い求めいただけます。在庫がなくなり次第販売終了となりますのでご確認ください。


・Internet of spice 

https://internetofspice.com/shop


・FARM CANNING SHOP

https://shop.farmcanning.com







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