• Chie Nishimura

太陽と井戸水と情熱と。おひさまシイタケの永島農園が愛されるわけ



「しいたけを焼くときは、かさをひっくり返して網で焼いて、かさの中でうっすら汗をかいてきたら(水分が水滴のように出てきたら)食べるタイミング。」


しいたけやきくらげなどのきのこ類を栽培する永島農園の永島太一郎君が教えてくれてからは、私はこの文句を完全コピーして友人や家族に伝えています。


ちょっとまだ焼けてないような、、生じゃないの?という怪訝な顔でこちらを見る相手に「はい、食べて!今!」と醤油をちろっと垂らして口に運ばせる。

すると、目を大きくして「おいしぃっ!」と感動する様子を見て、私はよろこびに酔いしれるのです...



さて、私が初めて永島君に出会った場所は、なんとイタリアでした。逗子と金沢区、車で20分ほどの距離に住んでいるというのに。


というのも、イタリアに本部を置き、世界160カ国に支部を持つスローフード協会の食の祭典「テッラ・マドレ」に日本代表チームとしてお互いに参加したことが、つながりを持つきっかけとなったのでした。

トリノの町をあげて世界中から、土着の食材、料理、お酒などがずらりと並ぶ、この上なくご機嫌なお祭り。

ここに、浴衣姿の日本人が闊歩していたーこれが永島君だったのです!


2018年トリノで開催されたテッラマドレにて。永島ご夫妻と四男君と

話を聞けば、大学卒業後に大手外資銀行に就職したのち、友人とベンチャー起業、そして奥様の陽子ちゃんの実家を継ぐことを決めて農業界に飛び込んだというではないですか。


元々彼女のご実家は500年以上農家を続けられてきていたとのこと。


農園のピザ窯に可愛らしくデザインされているように、米、果菜類、養豚、養鶏、野菜、花、と過去に数々の農畜産物に携わられていました。

ちなみにお米は大正8年に皇室へ献上したほどの基盤のある農家だったそう。


永島君が結婚を決めるころ、陽子ちゃんのお祖父様はハウスでお花を栽培されていたのですが「花の栽培にこだわることはない、君の好きなものを育ててみなさい」と裁量を任されました。


何をしようかと考えた末、花の栽培で使っているビニールハウスを活用できるきのこの栽培を思いつきます。

そしてこれまで一度も農業をしたことがないにも関わらず、シイタケ農家に弟子入りをした後、栽培のみならず、加工や収穫体験までできる現在の農園を一代で作り上げてしまったのです。


永島農園のピザ窯には代々作られた作物が描かれている


このエピソードを聞くたびに、陽子ちゃんへの愛情から始まってるなんて、素敵だねえ!ヒューヒュー!と冷やかそうとするのですが


「結婚するって決めてたんで。それに陽子のおじいさんが、自由にやってみなさいと懐深く見守ってくれたからやってこれたよね」とにこやかに応えられ、


仕事にも家族にも真っ直ぐに注ぐ情熱に、あえなく完敗するのでした。

今では四人兄弟のパパとママになり、愛のシイタケ農園となっています。



さて、この情熱シイタケ。

否、正しくは太陽の光を浴びて育った”おひさまシイタケ”は、ちょっと普通ではないのです。

一般的に、シイタケをハウスの中で菌床栽培をする場合は効率化のために湿度や温度などを厳しく管理します。そして直射日光をあてず暗いハウスの中で栽培します。


しかし実際には、シイタケが日陰で育つとはいえ、山の中では木漏れ日が当たったりするはず。できるだけそうした自然環境に近い生育環境にした方がいいのではと考えて、ハウスの横を開けて光を取り入れたり風を通したりしています。


さらにあまり知られていませんが、きのこ類の栽培にも薬剤を使う農家さんもいるのだそう。もちろん永島農園ではこうした薬剤はもちろん一切使わず、元々飲み水だった井戸水を使い、通常「手間がかかる」とされることを取り入れています。



ハウスの中は明るく太陽の光を取り入れている

ここまでするのはなぜなのか。

やはりその理由の一つは美味しさの追求です。

実際に大学の研究として調べてもらった結果、太陽の光を浴びて育ったシイタケと、そうでないシイタケとで比べて旨味成分が何倍もあることがわかったのだとか。


また農業に従事する以上、自然の循環を大切にしたいと夫婦で共通の思いを持っていたため、自分達ならではの栽培方法を導き出したということもこだわりの大きな原動力なのです。


こうして試行錯誤の末 ”おひさまシイタケ”と名付けられた永島農園のシイタケは、スーパーなどで販売するだけでなく、自分で収穫しに来ることもできるということもあって地元でもとても人気者。


私も何度か収穫をさせてもらっていますが、その度に楽しくて美味しくて興奮してしまいます。

まだ笠もできていないような小さなシイタケはさっと軽く炙って食べると、きのこの香りが優しく広がり、キュッとした食感もスナックのようで止まらなくなります。


もちろん肉厚なシイタケは、網焼き、ソテー、天ぷらやアヒージョなど、、ジューシーで立派な存在感です。


ぷるんぷるんのキクラゲ

シーズンによってキクラゲも栽培されていて、この生キクラゲも絶対に食べていただきたい。

まずはさっと熱湯に通してキクラゲの刺身にするだけで、コリコリの食感と旨味の世界にハマります。さらに炒め物やスープに入れるなど、どんな料理にも意外と合うので楽しんでもらえること間違いありません。


ちなみに私のお友達は、シイタケが嫌いだったのに、永島農園のシイタケを収穫して食べたら大好きになった、という奇跡の証となりました笑。


ファームキャニング×永島農園のイベントも開催しました

会うたびに「シードルを作ろうと思っている」「椎茸の旨味を使ったビールができた」「シイタケ栽培キットを作ってみた」「乾燥椎茸のために使ってるエネルギーを太陽光にシフトしようと思う」

と、新しい挑戦をしていて、

本当にベンチャー魂を感じさせられるこのシイタケ農園。


次はどんな美味しいチャレンジをしてくれるのか、とっても楽しみにしています。