Chie Nishimura
コンポストから始まる循環する暮らし(文:西村 千恵)

突然ですが、みなさんは、コンポストを使ったことがありますか?
コンポストとは生ごみや落ち葉から作られた堆肥のこと。
そしてこの堆肥を作る容器のことをコンポスターと呼びます。(日本ではコンポストというと堆肥のことも容器のことも両方指すことが多いです)
聞いたことはあるけれど、使ったことはない、という方も多いかもしれません。
このコンポストを使うことが、自然と人の暮らしの循環においていかに重要な役割を担ってくれているかをお伝えできたらと思い、今回のコラムで紹介させてもらうことにします。

ファームキャニングでは生ゴミをコンポストに入れて堆肥化しています
私がはじめてコンポストが暮らしの中に入ってきたのは、今から8年ほど前に長男が当時通っていた保育園がきっかけでした。
その保育園ではパーマカルチャーのワークショップが開催されていて、私も参加していました。
パーマカルチャーとはパーマネントアグリカルチャー(持続可能な農業)とパーマネントカルチャー(持続可能な文化)を掛け合わせた言葉で、自然と人の暮らしが循環するデザイン手法。
循環を大切にするパーマカルチャーにおいて、一見不要に見えるごみも有益なものに変換してしまうコンポスターは暮らしに欠かせないアイテムです。
そもそもコンポストの仕組みについて、まず紹介しましょう。
落ち葉や枯れ木、そして生ごみといった有機物を、コンポスターと呼ばれる容器の中に入れ、土と混ぜておいておくことで
微生物や菌類、虫たちによって分解され発酵し、堆肥化します。

出来上がった堆肥を土に混ぜて、健康な土で作る野菜はとても元気!
生ごみは放っておくと腐るわけですが、微生物をはじめとする他の生き物によって完全に分解され、発酵するとパラパラとした土のようになり、自然の一部に戻るのです。
出来上がったこの堆肥は野菜や花などの植物を育てるのに使うことができ、ごみとして捨てていたら価値のないものだったにもかかわらず、また新たな命を育む基盤となるのです。
自然は、自分のいのちを全うしてもなお、また次の命に繋がっていく仕組みになっていると考えると本当に素晴らしいと感動を覚えます。
有機物を分解・発酵させて堆肥化させるコンポストは、新しい考え方ではなく、日本でも昔から伝承されてきたものです。
自然と人間が共生する上では、当たり前のことだったのだろうと思いますが、近代化になりゴミは燃やしたり埋めたりして処理するもの、となってしまい、畑の足りない栄養分は化成肥料で補うようになると、使われなくなってきたと言われています。
しかし環境問題や気候変動に伴い、ここにきてまたコンポストが見直されてきているというわけです。

実際私が住んでいる神奈川県逗子市や、お隣の鎌倉市や葉山町ではコンポスターなどの生ごみ処理器を家庭に導入することを推奨しており、助成金も手厚く出ています。
(他の各自治体でも取り組んでいるところは多いのでぜひご自身の街の制度をご確認ください!)
私の周りでは、コロナで在宅ワークが増えたことと連動して、コンポストを使う方が増えました。
自宅で料理をする機会が増える=生ごみが増える=ゴミを見直す=コンポストを導入してみる。
ただ、大きなコンポスト容器を購入するのには上手く使いこなせるか不安だという声や、お庭がないの置けないのでは、とコンポストライフをスタートできないでいる方の声もよく聞きます。
そんな方にはミニマムで始められるよう、バッグ型のコンポストで人気の”ローカルフードサイクリング”や、ダンボールコンポストをおすすめしています。
ローカルフードサイクリングは一人暮らしでも気軽に始められ、ベランダでも置いておくことができるコンポストバッグです。購入するとバッグの中に、コンポストを作るための基材が入っていて、ここに生ゴミを入れるたびにスコップで混ぜ、容量がいっぱいになったらチャックをして置いておくだけ。
私も自宅で使いましたが匂いもなく持ち運びができて便利さを感じました。

ダンボールコンポストは、ダンボールのなかに土を入れ、生ゴミを投入したらかき混ぜる、を繰り返すだけ。もし米糠などがあったら入れるとより発酵を促進してくれるのでおすすめです。
ダンボールいっぱいになったら蓋をして風通しの良いところで約1ヶ月ほど置き、分解と発酵が終わったら堆肥として使えます。
ただ、ダンボールは水気に弱いので、雨の当たらないところに置いたり水気が多すぎるものを入れすぎないよう要注意。
さらに、コンポストを始めても出来上がった堆肥を使う場所がないけれど生ゴミをゴミとして出さずに循環させたいという方には、消滅型のキエーロ もおすすめです。
ぜひ自分のライフスタイルに合わせて、どのような容器が向いているのか検討するのが良いですね。
我が家も生ゴミをコンポストに入れるようにすると、燃えるゴミが本当に減りました。
ゴミを燃やすにはもちろん燃料が必要です。
生ゴミの80%は水分と言われていて、そうした水分量の多いものは焼却効率が悪いので補助燃料を輸入して使う必要があり、もちろんCo2排出量も多くなります。

個人の出す生ゴミをゴミに出さないくらいで、そんなに世の中変わらないんじゃない?
と思うかもしれませんが、いやいや!待っていても1日にして世界を変えてくれる偉大な人は現れません。
自分の気持ちと行動をほんの少し変えるだけで、少なくとも目の前に広がる世界の見え方は大きく変化していきます。
今年6月に「ごみを出さない気持ちのいい暮らし」という本が家の光協会から出版されました。
この本の中で私とコンポストのことも紹介していただいていますが、他の方々もとてもすてきなアイディアをたくさん載せていらっしゃいます。
暮らしの中からできる持続可能な社会への一歩のヒントがたくさん詰まっていますのでぜひ手に取ってみてください。
そして循環する暮らしを、どうぞ軽やかにスタートしてみてくださいね。