• Chie Nishimura

「おいしい」は友を呼ぶ。



逗子には、まちの小さな映画館「シネマ・アミーゴ」があります。

社会派からアーティスティックな映画まで楽しめるミニシアター。

アンティーク調のソファや椅子でくつろぎながらカフェのドリンクを飲みながら映画を観れるというのはなんとも嬉しい時間です。


この映画館に隣接したデリカッテッセン「アミーゴマーケット」。

お店のメニューはどれも地元の野菜をふんだんに使い、カラフルで元気がでると定評です。


今回のコラムは、このアミーゴマーケット店主 井上園子さんをご紹介したいと思います。

親しみを込めて、以下園ちゃんと書かせてもらいますね。


季節の野菜や食材が並ぶAMIGO MARKET

園ちゃんとの出会いは私が都内から葉山に引っ越してきた頃。

逗子葉山で知り合いになる人と話すたびに「園ちゃんが〜」「園ちゃんの〜」「アミーゴの〜」と話の中に登場してきていました。


それもそのはず、「逗子海岸映画祭」を10年主催し続けるシネマ・アミーゴの運営チームは地元のカルチャーシーンには欠かせない存在だったのです。


そのお料理部門で腕を鳴らすメンバーの1人が園ちゃんでした。

元々はシネマ・アミーゴで日替わりランチを担当していたところから、地元の食材を使ったデリカテッセンのお店をお隣にオープン。

店内でのイートインスペースもありますが、お弁当やケータリングなども人気です。

また、彼女の目利きで選ばれた食品や日用品なども並びます。


逗子海岸からすぐ近くのお店

私が園ちゃんとぐっと親しくなったきっかけはスローフード協会でした。


スローフードとは、私たちの食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための世界的な草の根運動(スローフード日本HPより)です。

1986年にイタリアで始まり、現在では160カ国以上に広まる国際的な社会的な運動となりました。


草の根運動というと、なんだか難しく、真面目で、硬いイメージがしませんか?

それが全くそんなイメージとは逆。

楽しくって美味しくって、最高なのです!


世界160ヵ国から集まる食の祭典「Terra Madre」は圧巻!

私自身は2016年にトリノで開催されたスローフードの祭典に日本代表チームメンバーとして参加させていただいたのですが、さすがイタリア。

眉間に皺を寄せて話し合いをするのではなく、各国の料理や食材がずらりと並び、世界の少数民族たちが音楽やダンスで人を魅了し、国や所属を超えた人たちと乾杯を交わす。


地球規模の環境問題や社会問題は、知れば知るほどこのままでは一体どうしたら良いのだろうかと前が見えなくなりそうなものですが、

「一緒に考えようよ!」「一歩踏み出そうよ!」「みんなで良い世界にしていこうよ!」とひたすらに明るく前向きなパワーが溢れた場でした。


生産者も製造者も流通業者も小売りも料理人も、、食を大切にしたいという想いある人たちが繋がりあい、未来に希望を見出す姿に私は完全に心を奪われたのでした。



イタリアでおにぎりを振る舞う園ちゃん

話を戻しましょう。

そんなスローフード運動に出会い、地元でも同じ思いの人と繋がろう!と帰国後すぐに意気揚々と仲間とともにスローフード三浦半島支部を立ち上げ、その最初の立ち上げメンバーの1人に園ちゃんが入ったのでした。


単においしいものを作るだけではなく、生産者さんと丁寧なやりとりをしながら季節の食材を大切にしながら素敵なデリへと昇華させていく彼女の姿は愛が溢れているなあと思ったものです。


何より、流通に乗らないもったいなじゃがいもで作った彼女のコロッケを食べた時の衝撃。

お母さん、おばあちゃん、、誰か身近な人が作ってくれたような、あったか〜いものが全身に染み渡るのです。


お...おいしい〜!


揚げたてをハフハフしながら頬張る園ちゃんコロッケはおいしいのです。


だけどもそれは味覚的に計算された完璧な数値を叩き出したようなものではなく、

心も体もほっとするような、緩むような、それでいて元気を注入してくれるような、やさしさの塊なのです。



スローフードのイベントで、三浦半島の仲間達のおいしい商品を並べて紹介してくれる頼もしさ

同じおにぎりでも、工場で作られたコンビニのおにぎりと、お母さんが握ってくれたおにぎりでは何で美味しさが違うのだろう?

誰もが感じたことがある話だと思います。


きっと食べものは栄養を摂取するだけのものではなく、人と人がつながりを実感する、そのための大切な要素を持っているのかもしれません。


人は、自然と切り離されたり、1人きりでは生きていけないということは明白です。


この人と一緒に食べるからおいしい。

あの人が作ってくれたからおいしい。


そんな風に私たちの五感は、人のあたたかさや心の繋がりを食べ物に重ねて「おいしい」と感じるようにできているような気がしてきます。



ライブでは手際良く2品を作りました

先日、そのちゃんには10月のRing the Bell HAYAMAのライブにご登場していただきました。


彼女が主宰する「逗子葉山常備菜研究所」は、地元農家さんからやってくる規格外野菜や余剰野菜を活用した保存食を、地元のお母さんたちで作ろうという試みで始まったとのこと。


その心意気にもあっぱれですが、出来上がる瓶詰めは「菊芋の佃煮」「季節野菜とシラスのふりかけ」など家庭の食卓にさっと使える安定した内容。

やっぱりみんなの胃袋を分かっています。



ライブではどんなものにアレンジするのかな、、と思っていると、まさかのふりかけをパスタに!

クリームソースにふりかけをかけて。

これがカリカリっとしたふりかけの食感を含めて、思いがけない組み合わせなのに、おいしいのです。


そして菊芋の佃煮は小松菜を炒めて和えてお豆腐に。

「菊芋は葉山でたくさんとれるんだよね〜」と、菊芋をたくさん消費するために考えられたレシピ。農家さんも嬉しいはずです。



逗子葉山常備菜研究所のびん詰めを使った料理

そして、この商品を作る手間といったら!

私もびん詰めを作る身として、園ちゃんのびん詰めには興味津々でしたが、ふりかけは天日干しをしてからさらにオーブンでドライにしていると聞いてびっくり。

しかも、色を飛ばさないようにこの野菜は低温で、食感をよくするためにこちらの野菜は一度茹でてから...


佃煮やふりかけとひとことで言っても、それぞれに最適な調理法で作るその手間があるということ。

それを商品として手作りでお届けする試行錯誤があるということ。

同じ瓶詰め屋として、声を大にして皆さんに伝えたい!


少々熱くなりましたが(笑)、食を介して繋がった園ちゃん。

これからも逗子のマンマとして、活躍を楽しみにしています。



ファームキャニング

西村千恵