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  • 執筆者の写真Yukiko Fujimoto

器と作り手に出会う旅 〜鹿児島編〜

はじめまして。onando zushiの藤本です。

onando zushiは、逗子にある、器と手仕事のものをご紹介するお店です。全国の陶芸家さんの企画展や、湘南エリアでものづくりをしている方のワークショップ等を開催しています。

https://www.instagram.com/onando_yukiko/?hl=ja

Ring the Bell HAYAMAさんの商品キュレーションを担当したご縁で、コラムを寄稿させていただくことになりました。



今回は、素敵な器と作家さんに出会えた鹿児島旅についてご紹介したいと思います。

onando zushiの様子。

コロナウィルスが流行し始める前は、年に数回、作家さんや窯元を訪れていました。

作っている方とお話しをするのはもちろん、その方の持つ雰囲気、場所や土地を実際に見て感じることを大切にしています。実際に赴くことで、思いがけない出会いや発見があるのも、楽しみの一つです。

2年ほど前、鹿児島県を巡る旅に出かけました。

鹿児島は歴史的に陶芸の盛んな県で、エリアによって特色が大きく異なります。

有名なのは『薩摩焼』。

安土桃山時代に豊臣秀吉による朝鮮出兵によって連行された朝鮮人陶工らが薩摩藩の各地に窯を開いたのが始まりです。


面白いのが、同じ薩摩焼の中に、「くろもん」と呼ばれる黒薩摩と、「しろもん」と呼ばれる白薩摩、真逆の色の2種類の異なる焼き物があることです。

黒薩摩は、鹿児島でよく取れる鉄分の多い黒褐色の土で作られる、重厚で素朴な器です。庶民の器として盛んに作られてきました。

白薩摩は、白土で作られる乳白色の器で、カラフルな色味を使って絵付されていたり、透かし彫りなどの精巧で繊細なデザインが特徴です。


鹿児島には鉄分を多く含む桜島の火山灰が降り注ぐため、白土は大変貴重なもの。そのため、白薩摩は薩摩藩の御用品、庶民は黒薩摩のみ使うことが許されていたそうです。

旅では、まず黒薩摩の龍門司窯へ向かいました。

龍門司窯は鹿児島空港から鹿児島市内へ向かう途中にあるので、立ち寄りやすくおすすめです。


窯元へ到着すると、山間の集落の中に、昔ながらの大きな建物が。外には乾燥中の器や、割れた器などが積まれています。数人の職人さんたちが分業で制作にあたっていました。



乾燥中の器たち。


裏には現役の登り窯がありました。

併設ショップにて。



次は白薩摩を目指して日置市の沈壽官窯 (ちんじゅかんがま)へ。

江戸時代になり、朝鮮人陶工らが薩摩藩の各地からこの地に移されてできた、白薩摩の里です。

陶工たちは、遠く故郷に想いを馳せながらも、代々懸命にいいものを作り続け、今の時代にも高い評価を得続けています。

沈壽官窯は、器が出来上がるまでの各工程の職人さんの作業姿を見学して回れる、なかなか他にはない施設です。

また、ショップと資料館も一緒になっているので歴史的な背景も知ることができます。

庭先の白磁の大瓶たち。




みているだけで肩が凝りそうな細かな作業を黙々と進める職人さん。




精巧なデザイン。




そして最後は南を目指します。

ネットで色々探していたところ、川辺町という山間の町に幻の焼き物の里(!)があるという記事を発見。面白そうだなとさらに調べると、一人の作家さんに行き着きました。


窯元はたいてい山の中にあるので、こんな道をずんずん進んでいきます。



その方は、伝統工芸の技術をベースに、作家としてオリジナルのデザインで作陶していらっしゃるとのこと。とても好みの作風だったのでぜひ直接見てみたいと思ったのですが、作家さんのウェブサイトやSNSが全然見つからず。

最後に町の発行する案内パンフレットに記載されてた工房の紹介記事に、電話番号を発見!

勇気を出してお電話してみたところ、作家さんご本人が電話に出られて、工房にお邪魔してもOKとのお返事をいただきました。


当日はとても温かく迎えてくださって、気さくに作品のこと、この地域のこと、ご家族のことなどお話しくださいました。


そしてちょうど窯出しの直後だったらしく、運よく豊富な商品を見せていただき、いくつか購入することができました。



工房國 上国料正記さんの器。




お財布と相談しながら私がどれを買おうか悩んでいると、それまで黙って見ていた夫のテンションが密かに上がっていたらしく、これとこれと、あとこれとこれも買おうか!と、突然爆買い宣言(普段は堅実タイプ)。


そんなこんなで、たくさんの器を服にぐるぐる包んでトランクに詰めて帰ったのでした。

人ともの、とてもいい出会いがあり、心がほくほくした旅でした。

工房國さんのわんちゃん。


日本は焼き物大国。どこかに行けば焼き物にあたります。器を主テーマとして出かけることももちろんありますが、旅の目的が別であると、そのルート上に何か面白い焼き物ははないかな?と別の視点で探すので、予想しなかったものに出会えることも。

器に限らず、旅は、一つ自分なりのテーマを持ってすると、楽しさが倍増するなと感じています。

作られる背景や作る人、その土地のことを知り、思い出とともに購入した器は、自然と大切に扱うので長持ちしますし、割れてしまっても金継ぎをしようと思えるくらい愛着がわいたりします。

現地へ赴くのが難しくても、お店で気に入った器が見つかったら、お店の人にぜひ色々と質問してみてください!今なら、お店のLive配信やzoomショッピングを活用して直接コミュニケーションを取ることもできます。思いがけないエピソードが聞けるかもしれません。


onando zushi 藤本

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