top of page
  • 執筆者の写真Ryuzo Akano

【店主赤野のサステナブルなカリフォルニア滞在記】第3回:古佐古ファームの日常



古佐古さんから待ち合わせ場所に指定されたのは、カリフォルニア州都サクラメントを抜け、約1時間半ほど北上した場所にある小さな食料品店。


駐車場で待っていると古佐小さんも到着し、彼の車に先導されてファームへと向かいました。


山間の道をしばらく進むと現れたのは、厳重な面持ちの二重ゲート。


柵の合間からは、7頭の巨大なピレネー犬がオンオンと吠えかかってきます。


ゲートを抜けて駐車スペースに停めると、車は完全に袋の鼠状態。


古佐古さんによると、飼い主とともに行動することで敵とみなさなくなるとのこと。


車から降りて彼から離れないように歩きはじめると、犬たちは静かにはなりましたが見定めるような鋭い視線を向けてきます。


家までの道のりがどれほど長く感じたことか......


(決死の覚悟で撮影した一枚。すごい威圧感。)


そんな少々荒い歓迎を受けながら、都会暮らしに慣れた自分がここで暮らすことができるのかという不安と、これからはじまる未知の世界への期待が頭の中で入り混じっていました。


家に入って落ち着いたところで、お互いの自己紹介を。


古佐古さんは世界的なジャズハープの演奏家でもあり、自給自足の暮らしをしながらインターネットなど現代的なインフラも併用し、文化的なライフスタイルを目指しているとのこと。



奥様のテラは、とても陽気でフレンドリーな方。おかげで僕の緊張もあっという間に解れていきました。


そしてこの場所は、彼女が生まれ育った実家でもあります。



古佐古ファームと呼んでいる約2万坪の広大な敷地には農園や池があり、その間をヤギやニワトリが自由気ままに行き交う長閑で素朴な風景が広がっています。


動物や野菜を猛獣から守るためファームの周囲は電気柵で囲まれ、定期的に断線のチェックをしているのだそう。



敷地の一角が住居スペースで、ダイニング、キッチン、シャワーのある母家を取り囲むように3棟の小屋が建ち、そのうちの1棟を僕がお借りすることになりました。


明日からの過ごし方について話しながら初めての夕食を囲み、その夜は旅の疲れもあり早めに就寝。


目覚めた僕を待っていたのは、人生で経験したことのない非日常でした。


古佐古ファームでの一日は、こんな風に過ぎていきます。


のんびりと朝食をとった後、鶏舎に卵を取りに行くことからスタート。


ニワトリたちに突っつかれながら色とりどりの卵を集め、ときどきご近所さんにお裾分けすることも。


そして鶏舎の掃除をした後、ニワトリのふんを集めて堆肥づくりを行います。


その後すぐにチェーンソーで小枝や丸太を切る作業。



枝はまとめって数カ所に積み上げ焚き火の要領で燃やすのですが、自由に燃やせるわけでもなく、当日電話で政府に許可をとってから火を付けます。



次は丸太を集めて薪割り。


コツを教えてもらったのですが、狙った場所に振り下ろせなかったり、変な角度に切り込んで抜けなくなってしまったり、これがなかなか難しい作業。


滞在1週間を過ぎた頃、ようやく形になってきました。



ここでようやく昼食。


日本ではあまり体を動かさない生活をしていた自分にとって、「お腹が空く」という感覚は久方ぶり。


食事の時間だからと機械的に食べ物を口へ運ぶのではなく、体力と気力をつけるために食べなくてはという、原始的で自然な欲求を感じることができました。


古佐古さんが作ってくれることが多かったのですが、さまざまなジャンルを取り入れた多国籍なメニューで、何を食べても本格的で本当においしい!


うどんも小麦粉から手打ちで作り、寿司作りもプロ並みの腕前なのです。


そんなわけで、食事は滞在中の大きな楽しみの1つでした。



午後は枯れた木の伐採のお手伝い。


この辺りは高木が多く伐採にはけん引が必要なため、木にロープを掛けて倒れる方向を制御します。


古佐古さんがチェーンソーを器用に操ったかと思おうと、メリメリと音を立てて倒れる大木。それはとてもダイナミックな光景でした。



ここでは道路の補修も自分たちで行います。


舗装されてないため、ぬかるみができた箇所を車が何度も往復していると深い溝ができてしまうんです。


道の両脇を掘り返して水の通り道をつくりながら、タイヤでできた溝を埋めていきます。


柔らかい土であれば何てことはないのでしょうが、周辺一帯の土は石が多く混ざっていて、ショベルでは簡単に掘り起こすことができないほど。


しかも小石ではなく数キロ単位の大きい石がゴロゴロしていて、取り除くだけでも一苦労です。


作業をはじめて1時間もするとショベルを握れないほど握力がなくなり、自分の体力不足を思い知らされました。


そんな僕をよそに何時間でも黙々と作業を続ける古佐古さん。これらの作業に加え、春になると野菜づくりのための農作業もするとのこと。尊敬するしかありません......



伐採、薪割り、道路の補修、これらの作業はお金を払って業者に頼むことができますし、苦労してまで自分でやるという考えは日本にいる頃の僕にはありませんでした。


しかし毎日この作業を繰り返すうちに、最初から誰かに依頼するのではなく、まず自分でやってみるということが大切なのではないか?と思うようになっていきました。


そして体づくりのためにスポーツジムに通う必要もありませんから、お金もかからないわけです。

bottom of page